「1分でいいから考えて欲しい」シリア人俳優が訴える難民の現状とは?

2017年11月30日 17時00分

エンタメ anan

忙しい毎日を送っていると、何かとイライラしがちですが、そんなときこそ小さな優しさに救われるもの。そこで、人々の善意が詰まった心がじんわりと温かくなるイチオシの映画をご紹介します。それは……。

優しさとユーモアが溢れている感動作『希望のかなた』!

【映画、ときどき私】 vol. 129


シリア人青年のカーリドは、内戦が激化する故郷から逃れ、偶然フィンランドの首都であるヘルシンキにたどりつく。いまや空爆ですべてを失ったカーリドにとって、唯一の望みは生き別れた妹を見つけ出すことだけだった。


難民問題に悩まされていたヨーロッパの影響もあり、街ではカーリドも差別や暴力の標的にされていた。しかし、そんなときレストランオーナーであるヴィクストロムが救いの手を差し伸べることに。なぜなら彼もまた人生に行きづまり、やり直そうとしていたのだった。徐々に絆を深めていく2人の未来には希望の光が見えていたと思っていたが……。


本作は、フィンランドを代表する名匠アキ・カウリスマキ監督による作品であり、ベルリン国際映画祭での銀熊賞(監督賞)の受賞をはじめ、世界各国で称賛されている作品。そこで、主演を務めたこちらの方にお話を聞いてきました。それは……。


シリア人俳優のシェルワン・ハジ!

今回は、役者として人として感じている思いや来日秘話についてお話しいただきました。当初プロダクションからキャスティングについてのメールを受け取ったとき、ハジさんはアマチュア映画のエキストラ的な役だと思っていたそうで、カウリスマキ監督の作品でしかも主演の役であるということをまったく知らなかったという。


では、実際に決まったときの心境はどうでしたか?

ハジ 家に歩いて帰っているときにカウリスマキ監督の映画だということを初めて知らされたんだけど、表現できないようなさまざまな気持ちでごちゃ混ぜになって、まずは至高のうれしさ、そして恐怖だったよ(笑)。恐怖といっても、もちろん喜びが満ちた意味だけどね。


これだけの監督と一緒に仕事ができて、しかも主役というのは、役者として夢が叶うような状況だとも思ったよ。大きな責任を伴うものでもあるから、うれしい気持ちの反面プレッシャーもあったけど、そういう不安の気持ちを原動力にして役を演じようとしたし、難民の重大な問題を自分が代弁したかったんだ。


それだけのプレッシャーのなかで演じていて、困難に感じることはありませんでしたか?

ハジ フィンランドだけでなく、全世界のことも話さなければいけないし、何千人もの人たちが抱えている日常的な苦しみや体験をフェアな形で観客に提示することの難しさはあったけれど、大きなチャレンジというものはいいものだよね。


人生がよりエキサイティングになるし、より大きな意味を持つと感じるからなんだ。だから、自分としてはいろいろな感情を合わせて、勇気に変えていったんだよ。


ハジさんは、もともとはシリアで演劇学校に通っていたそうですが、卒業した年のある日に酒屋の前でフィンランド女性と偶然出会い、それがきっかけでその女性と結婚し、フィンランドへ移住するという驚きのエピソードの持ち主。


同じくシリアからフィンランドに渡った今回の役にシンパシーを感じたところはありましたか?

ハジ 共通点はたくさんあったと思うし、僕は自分のことも難民と捉えているよ。ただし、愛の難民だけど(笑)。女性からのプレッシャーは、戦争によって与えられるプレッシャーよりも少ないものではないと思っているからね……。ただ、それは悪いものではなくて、いい意味ですよ! 女性ほどプレッシャーを与えることがうまい人たちはいないと思っているから(笑)。


役作りとしては、その人と同じような形で映画を見たり、物語を読んだり、感情移入をしながら自分が見ている世界と合わせるようにしているんだよ。あとは脚本を読みながら共通項を見出して、自分を役柄と一緒に合わせていき、それをスクリーンの前に出すようにしているんだ。そしてもうひとつは、自分がシリア人であり、こうした物語をいろいろな友人から聞いていたから、そこに自分の知識を付け加えていったところもあるね。


本作で描かれているように、小さな優しさが集まって希望に変わっていく様子は、誰の心にも響くところ。


実際に他人の優しさに救われた経験はありますか?

ハジ もちろんあるよ。僕はこういう困難な状況だけではなく、日常的にあると思っているんだ。というのも、最初にフィンランドに着いたときにすごくいい人たちに会って、いろいろなチャンスを与えてくれたんだよ。それはどれだけ小さなことでもあっても美しいことだし、決して忘れることはないでしょう。


僕はその瞬間を心のなかに保存していきたいし、感謝しているんだ。だから、彼らと同じように今度は自分が誰かに勇気や希望を与えることができればいいなと思っていたところなんだよ。


この役を演じたことで影響を受けたことは?

ハジ パソコンみたいにデータをダウンロードするだけのことではなく、段階を踏んで役と合わさって経験を蓄積していくわけだから、もちろん自分の人格に何かを与えていると感じているよ。


僕は戦争の前にシリアを立ち去っているから、家族を失ったり、無理やり出国させられたり、何もないところに追いやられてしまったりした同胞たちと自分との間にギャップを感じざるを得なかったんだ。でも、この役を演じることによって、それに取って代わるメモリーを与えてくれて、ギャップを埋めてくれてたような気がしているんだよ。


そして、「難民というのは何を意味するのか」というのをより考えるようになった。人間というのは、自分の家のなかで起きてないことは起きていないのと同じことだったりするけど、それは僕にとっても同じことだったということだね。テレビの前で戦争を見ていただけのときと、いまはだいぶ違う見方をするようになったよ。


今回、長編初主演にも関わらず、ダブリン国際映画祭では最優秀主演男優賞も受賞したほど高く評価されているハジさん。


俳優として変化したことは?

ハジ 正直言って、自分が役者として得たことは期待していた以上に大きいものだったよ。というのも、映画を通して伝えることや何かができるということを教えてくれた人たちがいたからなんだ。


だから、受賞したという知らせを聞いたときはとてもうれしい気持ちだったけど、自分の名誉のような感覚とはまた違うものだったよ。それよりも、この作品を通してメッセージを伝えることができるというその一部になれたことのほうが光栄だったからね。


本作で見どころのひとつとなっているのは、主人公たちが日本食レストランをオープンさせるシーン。特に、日本人にとっては、ツッコミどころ満載で笑いが止まらないところですが、実際の日本人もエキストラとして登場していたという。


日本人との撮影で印象に残っていることがあれば教えてください。

ハジ 僕にとってもすごく楽しかったよ。いろんな人について知ることができる人間的な体験としても大きなものになったし、撮影に参加してくれた日本人のうちの数名とは友だちにもなって、コーヒーを一緒に飲みに行ったりもしたんだ。


そして、いまこうして日本に来た経験も含めて、また違うレベルに行けている気がしているよ。いろんな日本人の男性たちと一緒に温泉にも入ったしね(笑)。たとえ短い滞在であっても、みなさんの意識やふるまいとかを見ることはとても刺激になるし、強く印象に残るんだ。


今回の来日で新たに経験したことはありますか?

ハジ 初めて馬刺しを食べました。最初はとにかく驚いて「なんてことだ!」と思ったよ。だって、馬と言われると馬そのものがまず目の前に浮かんできて、しかも肉がそぎ取られているところを想像してしまうからね(笑)。だから、もちろん躊躇したよ。


でも、体験が増えれば、次の世代の人たちに何か伝えることができると思ったから食べたけど、とても新鮮で柔らかく、自分の想像とは真逆の印象だった。そんなふうに僕たちは決まった印象というのを持ってしまいがちだけど、味わうことでまったく違うことに気づかされるから、そうやって世界についての理解を増やしていくのは大切だよね。でも、いまのところ1回で十分だから、また馬肉を食べたいとは思わないけど(笑)。


映画でもお寿司が出てきますが、本物のお寿司を日本で食べたときの感想は?

ハジ これまで、ヘルシンキやロンドンで食べていたとしても、日本でお寿司を食べるというのは、本物のスキルも見られるし、体験として全然違うものだよね。もちろん味も映画よりはるかに良かったよ(笑)。


最後にこの作品をどのように受け取って欲しいか、読者に向けてメッセージをお願いします!

ハジ 誰かのせいにしたいとかこうやらないといけないと言いたい気持ちはありません。ただ、自分がその人たちと同じ立場になったときに、何を考え、どういう気持ちになるか、目を一度閉じて1分だけでもいいからみんなに考えて欲しいと思っているよ。つまり、自分の家から追い出され、破壊され、そして目の前で扉が閉ざされていく気持ちについてだね。


だからといって、無理やりドアを開けろとか、迎え入れろとかは僕が言うことではないでしょう。もちろんそうしてくれれば、それは美しいことではあるけれど。でも、僕はいつでもどこでもいい人はいると信じているし、状況が変わるだろうという希望を持っているんだ。なぜなら、僕たちにはすべてに対して希望しかないのだから。


インタビューを終えてみて……。

難民や世界の現状に対して真摯に答えてくれるいっぽう、時折冗談で笑わせてくれるお茶目なハジさん。取材の前にはお気に入りの日本食の写真を見せてくれたり、温泉の話をしてくれたりと日本を満喫してもらえたようなのでよかったです。そんな新しい経験をたくさんしたハジさんの今後も楽しみにしたいと思います。


人の優しさにこそ魂が救われる!

日本は難民認定率が世界平均の100分の1にも満たない国といわれているだけに、自分たちのこととして考えにくい問題ではあるけれど、まずは映画を通じて現状を知ることも大切なこと。そして、小さな優しさが生み出す大きな希望の光に胸の奥が熱くなるのを感じてください。


じわじわと心にしみる予告編はこちら!


作品情報

『希望のかなた』 

12月2日(土) 渋谷・ユーロスペース他にて全国順次公開

配給:ユーロスペース 

© SPUTNIK OY, 2017

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2017年11月30日 17時00分

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